***a scar SIDE S

 

 ヤードは眠い目をこすりながら。心底迷惑だと思っていた。
「だってね、あの子、毎晩のようにアタシの寝室訪ねてくるのよ? 枕だとかお酒だとか抱きしめて」
 本当に、勘弁して欲しい。
 目の下に黒い色素沈着があるだろうことは、鏡をみなくても容易に想像がつく。
「ちょっと、ヤード。聞いてるの?」
「……聞いてますよ」
 ヒステリックに叫ぶ幼なじみの声に、心の中で嘆息を漏らす。
「あんな可愛い目で見上げられて、こっちがどんな想いしてるのか
!! ちっともわかってないのよ、絶対」
「スカーレル、それはのろけているんですか?」
「うっさいわね、このロリコン。あんたベルのことだけ考えてりゃいいのよ。全く、このアタシが本気で相談してるっていうのに」
 愚痴愚痴と言葉を続ける彼の科白の中の一つの名前に。ヤードは息が止まるほどの衝撃をうける。
「ベ、ベルフラウのことはここでは関係ないでしょう? ど、どうしてそんなこと知っているんです」
 先ほどまでの独白はなんのその。スカーレルは不敵に笑んでみせた。
「あら、あれで隠していたつもりだったの?」
 形勢は一気にヤードの不利へと傾く。
 どうしてこんなことに、頭を抱えながらも。
 三日目の徹夜が開けようとしていた。


結局は先生にメロメロなスカさんと苦労人のヤードさん。
自分の恋が前途多難だっていうのに、幼なじみは延々と惚気スレスレの愚痴ばかり。
そりゃ、頭痛くもなるよね。
2003/12/11

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